アメリカの技術調査会社Gartnerは、今年10月に2018年までに起きる社会状況の展望を発表した。Gartner社はアメリカを代表する調査会社で、テクノロジーの先見性には定評がある。経産省が毎年発行している情報通信白書でも引用されている程だ。近年は特に、ICTの急速な発達による社会へのインパクトが重点的に分析されている。
1)『人間に代わって機械が文章を書くようになる。2018年までに、ビジネスコンテンツの20%、つまり人間が目を通す文書の5件に1件は、コンピュータが執筆したものになる』
これはアメリカというか英語圏での話に限られてしまうのだが、Web上の経済情報はすでにコンピュータによる自動生成で書かれている。すなわち、この延長線上にはこのような社会にすぐになるというお話。20%かどうかは分からないが、ビジネス文書の相当数を占めるのは確かだろう。
2)『世界で300万人以上の勤労者が、「ロボット上司」の監督下に置かれる。問題なのは、ロボット上司には人間的な反応がないことだ』
ここには異論反論が多数あると思うが、作業指示をするのが「上司」というのなら実現性はある。まあ業務指示や進捗管理のような管理作業は、決まりきったパターンなので、ある程度自動化は可能だ。しかし勤務評定まで機械的にやられたら、労働者が反発するのは明白。
3)『2018年までに、デジタルアシスタントが顔と声で個人を認識するようになる。現在、パスワードはうまく機能しなくなっており、強力なパスワードは覚えておくのが難しいからだ』
これは生体認証が急激に発達したので、早急に実現してもらいたいことだ。顔認証に関しては、十分なコンピュータパワーがあれば、すでに人間の持つ顔の識別能力を越えているのだ。
4)『2018年までに、200万人の被雇用者が、健康管理デバイスやフィットネスデバイスの装着を雇用条件として義務づけられる。例えば警察官のように、健康な人でないと務まらない職種もあるからだ。こうした機器を装着する企業側のメリットは、健康な社員が増えると保険コストを抑えられるのだ』
これは技術的に今でも実現できているし、日本の大企業では既にメタボ社員に対して腕輪型の健康デバイスの装着が推奨されている。だが、会社側が雇用条件に入れてまで、従業員の健康を徹底監視・管理するかどうかは社会情勢によるだろう。基準を満たさないからという理由で、雇用が維持できないとなると、労働者の権利問題になるからだ。また、健康管理と称して、実態は行動監視までできてしまうので、従業員には相当な抵抗感はあるはずだ。
ま~ここで取り上げたような予測は、ICT関連分野に従事している人なら、納得するかどうかは別にして、驚くような話ではないはず。これらは現在のテクノロジーの延長線上にある社会状況を推測したにすぎないからだ。
ただ、アメリカ社会は日本や欧州と異なり、先端テクノロジーを率先して企業経営に取り入れ、常に他社より有利に立とうという傾向が強いので、状況を推測しやすいのだ。良いか悪いかは別にして、伝統や文化を重視するような社会では、従業員の生活に大きな影響を与えるような技術や仕組みだと、導入には慎重のはず、と信じたいもんだ。もっとも、アメリカを盲目的に追従してきた日本は、どうなるかわからないのだが・・・