機械学習と読書の世界

「ジュラシック・ワールドとゲノム編集」2015年8月

canstockphoto346884951993年に公開された「ジュラシック・パーク」は、マイケル・クライトンの傑作SFを、スピルバーグ監督が見事な映画に仕上げて、世界的に大ヒットした映画だった。今年8月に公開された「ジュラシック・ワールド」を先日観たのだが、僕の感想は『初代ジュラシック・パークのリメーク作品』というものだ。まあ色々な意味でだ。

このSF「ジュラシック・パーク」は、1990年に発表されているので、もう25年も前の小説だ。バイオテクノロジーという言葉が、まだ新鮮な響きに聞こえていた時代だった。琥珀に閉じ込められた蚊の中から恐竜の血液を採取し、そのDNAから恐竜を再生するという秀抜なアイデアだった。カオス理論(複雑系)という当時の最新の理論まで駆使し、実際に恐竜を再生できるのではと、思わせるくらいの素晴らしい出来だった。

あれから25年も経ったが、映画の方はCGが一層リアルになり3Dにもなったが、それだけだ。ストーリーは、そつなく観客の予想通りの展開で進み、決して前作を超えるものではなかったと思う。

映画はさておき、近年のバイオテクノロジーの進歩は著しい。人間のDNA解析は、この「ジュラシック・パーク」が発表された1990年から始まり、「ヒトゲノム計画」としてアメリカが30億ドルの予算と13年の期間をかけて全遺伝子配列を解明した。ところが現在では、人間1人の全遺伝子を解明するコストは、コンピュータの驚異的進化で、数十万円と劇的に下がった。アメリカのベンチャー企業の中には、唾液をセットすると4時間で全遺伝子を解析するサービスを、始めようとするところまである。

まあ、DNAの塩基配列が決定できても、その「意味」つまり「機能」が判明しなければ役には立たない。メッセンジャーRNAやタンパク質などの遺伝子産物の解析、生物種間で塩基配列がどれだけ似ているかなどを比較して、個々の遺伝子に関するデータなどを基に解析を進めなければ、機能が分からないのだ。現在、このように地道に調査研究が行われ、そのデータが世界的なDNAデータバンクに登録されつつある。

このようにして、人間のゲノム解析がかなり進んできているのだが、最近さらに画期的な技術が開発された。それは「ゲノム編集」である。これは簡単に言うと、文字通りDNA二本鎖を解離させ、ターゲット配列を認識して両方の鎖を切断、編集することができる驚異的技術だ。従来の遺伝子操作は偶然に頼っていたのだが、これを狙い通りに操作できる技術なのだ。この技術は既に応用されており、実験では肉の量を2倍にした牛や体長を大きくしたマダイなど、生物をデザインできるようになってきた。このため『人が神の領域に踏み込んだ』とも言われている。

そう、このSF「ジュラシック・パーク」の時代が、ついに到来したのだ。この「生物をデザインする」意味を、もっと一般の人も深刻に受け止めるべきだろう。
『遺伝子の改変についてできないことは、ほとんどなくなった。 最終的な問題は、法律もあるが、人々がそれを受け入れるかどうか、というところに来ている』と、生命倫理を研究している北大教授は述べている。
つまり、遺伝子編集した猿をすでに誕生させているので、人間にも応用できてしまうのだ。できるから、何でもやってよいはずがない。どこまでやってよいという議論がほとんどできていないうちに、技術だけがどんどん進んでしまっているのが現状だ。

かつて受精卵をベースにした万能細胞「ES細胞」が開発されたとき、日本は生命倫理上の観点から、人間の受精卵を用いた実験を規制した。このため日本は、ES細胞に関して世界各国と比べて研究が遅れてしまった。しかし山中教授の発見した人工多能性幹細胞「iPS細胞」は、受精卵をベースにしていないため倫理上問題ないということで、一気に再生医療の研究を進めることができたという経験がある。

しかし、この生物をデザインする技術「ゲノム編集」は、使い方によってはES細胞の比ではないくらいのインパクトを社会に与えるだろう。穀物や家畜に応用することで、人類の食糧問題を解決できる可能性を秘めているが、「デザイナーベイビー」まで実現できてしまう。それこそSFの世界によくいる「マッド・サイエンティスト」が、人間と動物のキメラを作ってしまう可能性まであるのだから・・・

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