機械学習と読書の世界

「人工知能にお任せする投資の実態とは?」2016年8月

canstockphoto157715282016年5月に、日経新聞は夕刊のトップで「運用 人工知能が台頭」と報じた。最近は、「人工知能」という言葉を付けた商品やサービスが急に増えてきているが、投資信託まで「AI運用」とか言い出しているようだ。

金融業界は、最近「Fintech」というIT業界からの黒船で大騒ぎになっており、「ロボアドバイザー」や「ブロックチェーン」などの言葉が飛び交っている。この「AI運用」とやらも、このフィンテック騒ぎのドサクサの中で、以前からある「アルゴリズム取引」をお化粧直ししたものと思われる。

昔から言われていることだが、そもそも本当に運用成績の良い「投資手法」を見つけたら、それを一般投資家に教えるわけがなく、まず自分で売買するはず。ギャンブル必勝法とは、大昔から胴元になることと決まっており、胴元は自分の儲けは寺銭なので賭場が賑うことしか考えていないのだ。

株式投資は、本来ならその会社を育てるための投資のはずだったのだが、ウォール街に巣くう「金の亡者」どもが、単なるギャンブルに貶めてしまった。金融工学とか、いかにもそれらしい数式を振りかざしても、リーマンショックがその化けの皮をはがしてしまった。金融工学だ、人工知能だと言ったところで、株価予想とは所詮は未来予想、つまり占いと同義であることに、どうして一般投資家は気がつかないのだろうか。

私は自分の著作「ビジネスで使う機械学習」の中で、売上予想は機械学習で出来ると書いた。機械学習は、「正しいデータ」が大量にあれば、ある統計手法によって確率の高い予想は可能だ。しかし、あくまで確率が高いというだけだ。ディープラーニング(深層学習)を用いたとしても、入力データの中に正解が含まれていない限り、やはり完全な「正解パターン」は発見できない。どんなに素晴らしい金融工学であろうとも、株価の変動原因が「世界情勢」にあるのだから、世界の全情報を収集・分析できない限り、原理的に株価の予想は不可能なのだ。

物理学の世界では、ニュートン力学やアインシュタインの法則のように、世界の原理はシンプルな数式で表現できるという「神話」がある。しかし、原子や素粒子は数式に従って動いているのではない。その逆で、原子や素粒子の動きに最も近い数式を、科学者が当てはめただけだ。科学には「XXの法則」がたくさんあるが、そこで用いられる数式はすべて「近似式」でしかないのだ。

過去の膨大な株価変動データから、ある秘密の方程式を発見した、というようなお話が時々出現する。しかし経済学は、科学ですらない。経済学者たちはそれらしい理論や数式を振りかざすが、所詮は統計学であり確率の問題。まして世の中の経済は、経済学者の理論的根拠である経済合理性などではなく、「人の気分」で動いている。英国のEU離脱を見ていれば、これは明らかだろう。経済学者が、「人々は論理的合理性で動く」と考えているとしたら、すでにその大前提は崩れている。もし本気で株価を予想したいのなら、社会心理学や群集心理の研究からアプローチを始めた方がまだマシだろう。

株屋は、「ロボアドバイザー」や「人工知能」の流行り言葉で、ギャンブルの素人を大勢集めて賭場を賑わし、寺銭を稼ごうと虎視眈々と狙っている。IT系の流行り言葉は何やら難しげで、大衆はその実態を知ろうともしないことを利用しているのだ。大衆である我々は、胴元の戦略に惑わされないためにも、IT系流行り言葉(バズワード)は、常に把握していなければならないのだ。

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